住宅ローン控除
① まず自分のケースを確認
取り戻し方は、大きく3つのパターンに分かれます。次の2つの質問で、ご自身がどのパターンに当てはまるかを確認してください。
→ パターンA(取り戻せる可能性が高い)
▶ 提出している(医療費控除やふるさと納税などで申告した)
→ 次の質問へ
→ パターンB(原則は取り戻せない/ただし救済の可能性あり)
▶ 記載したが、計算ミスや書類の不備があった
→ 通常の「更正の請求」で訂正可能(本記事では割愛)
なお、2年目以降の年末調整で書き忘れた方は、その年について確定申告書を提出していたかどうかで、上記AかBに振り分けられます(詳しくは④で解説)。
| 状況 | 取り戻し方 | 可否 |
|---|---|---|
| A 確定申告書を提出していない | 還付申告(5年以内) | ○ |
| B 確定申告書は提出済み・住宅ローン控除の記載なし | 税務署への相談・嘆願 | △ |
| C 2年目以降の年末調整で書き忘れ | 状況により A または B | - |
② パターンA:確定申告書を提出していない方(取り戻せます)
給与所得者で源泉徴収のみで完結していた方や、そもそも初年度の確定申告自体をしていなかった方は、このパターンに当てはまります。5年以内であれば、いまから「還付申告」をすることで住宅ローン控除を受けられます。
どの年分まで遡れる?
還付申告は、その年の翌年1月1日から5年間提出することができます(国税庁タックスアンサーNo.2030)。令和8年中に手続きするのであれば、次の年分まで遡って申告が可能です。
| 居住開始年 | 還付申告の期限 | 令和8年中の可否 |
|---|---|---|
| 令和3年分(2021年) | 令和8年12月31日まで | ○(年内に!) |
| 令和4年分(2022年) | 令和9年12月31日まで | ○ |
| 令和5年分(2023年) | 令和10年12月31日まで | ○ |
| 令和6年分(2024年) | 令和11年12月31日まで | ○ |
| 令和7年分(2025年) | 令和12年12月31日まで | ○ |
手続きの流れ
- 遡って申告したい年分を確定する(複数年分まとめて可。各年ごとに申告書を作成)
- その年分の様式で必要書類を準備する(次項参照)
- 納税地(住所地)の所轄税務署に提出する(e-Tax可)
- 還付金が指定口座に振り込まれる
主な必要書類
- 確定申告書(その年分の様式)
- (特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書
- 家屋・土地の登記事項証明書
- 売買契約書または工事請負契約書のコピー
- 住宅取得資金に係る借入金の年末残高証明書
- 本人確認書類(マイナンバーカード等)
認定住宅・中古住宅・連帯債務などの場合は追加書類が必要です。なお、令和元年(平成31年)4月1日以後は、給与所得の源泉徴収票の添付は不要となっていますが、申告書の作成自体には必要なので、勤務先に再発行を依頼してください(後述)。
還付までの期間(目安)
- e-Taxで提出:約2週間
- 書面で提出:約1か月
③ パターンB:確定申告書は提出済みだが、住宅ローン控除を書かなかった方
「医療費控除を受けるために確定申告したけれど、そのとき住宅ローン控除のことを知らなかった」「ふるさと納税の還付申告のついでに書くべきだったのに、住宅ローン控除を書き漏らした」——このようなケースに該当する方です。
住宅ローン控除は、その年分の確定申告書に控除額を記載し、必要書類を添付して提出することで適用される制度です(租税特別措置法41条)。当初の申告書に記載がなかった場合、それは「税額計算の誤り」ではなく、「適用しないことを選択した」と扱われるため、国税通則法23条の更正の請求事由には該当しないとされています(裁決事例集No.73 平成19年2月19日裁決、国税庁質疑応答事例「選択替えに係る更正の請求の可否」など)。
それでも諦めないでください——税務署への相談という選択肢
納税者からの「更正の請求」は認められませんが、税務署長には職権で減額更正を行う権限があります(国税通則法24条)。実務上、事情を説明することで、税務署が職権で住宅ローン控除を反映した減額更正をしてくれるケースは存在します。
特に、給与所得者の方が医療費控除やふるさと納税の還付申告のためだけに確定申告書を提出し、そのときに住宅ローン控除を書き漏らしたようなケースは、本来「ついでに書けば普通に控除を受けられたはず」のものです。税額への影響も大きいことから、税務署が後から住宅ローン控除の適用を認めるケースがあると、税理士向けの実務情報でも報告されています。
手続きの流れ
- 納税地の所轄税務署(個人課税部門)に電話し、住宅ローン控除を書き忘れた旨と事情を相談する
- 税務署の指示に従って必要書類を準備する(パターンAと同等の書類+当初申告書類のコピー等)
- 「更正の嘆願書」を税務署に提出する(更正の請求書の様式を流用し、タイトルを「請求」から「嘆願」に書き換えるのが実務的な運用です)
- 税務署の判断を待つ(処理期間は2か月程度が目安)
- 認められれば、職権による減額更正が行われ、還付金が振り込まれる
「嘆願」は法律上の権利ではなく、職権更正に応じるかどうかは税務署長の裁量です(東京高裁平成3年1月24日判決)。必ず救済される制度ではない、という点はあらかじめご理解ください。手続きや嘆願書の書き方に不安がある場合は、税理士にご相談いただくと、税務署との交渉や書類作成をスムーズに進められます。
④ パターンC:2年目以降の年末調整で書き忘れた方
初年度は確定申告で住宅ローン控除を受けたものの、2年目以降の年末調整で控除証明書を出し忘れた、というケースです。この場合、その年について確定申告書を提出したかどうかで結論が変わります。
| その年の確定申告書 | 取り扱い | 可否 |
|---|---|---|
| 提出していない | パターンA(還付申告で5年以内に取り戻せる) | ○ |
| 提出済み・住宅ローン控除の記載なし | パターンB(税務署への相談ルート) | △ |
特に盲点になりやすいのは、「医療費控除やふるさと納税のために確定申告を出した年に限って、年末調整で住宅ローン控除を書き忘れていた」というケース。この場合は、その確定申告書の中で住宅ローン控除も一緒に申告すべきだったため、パターンBの扱いとなります。確定申告をする年は、年末調整漏れがないかも合わせてチェックする習慣をつけたいところです。
⑤ 申告の前に確認したい注意点
注意点1:ふるさと納税のワンストップ特例が無効になる
ふるさと納税で「ワンストップ特例」を申請していた年について、後から確定申告(還付申告)をすると、ワンストップ特例の申請は自動的にすべて無効になります。確定申告書にふるさと納税の寄附金控除を改めて記載しないと、ふるさと納税分の控除がそのまま失われてしまいます。
住宅ローン控除を遡って申告する際は、その年のふるさと納税の寄附金控除も一緒に申告書に記載することを忘れないでください。寄附金受領証明書(または寄附金控除に関する証明書のデータ)が必要になります。
注意点2:時効が迫っている方は12月中に動く
還付申告の期限は「その年の翌年1月1日から5年間」、つまり5年目の12月31日までです。年末は税務署が閉庁日となるため、駆け込みでの提出は避け、12月上旬には準備を始めるのが安全です。
令和3年分(2021年居住開始)の住宅ローン控除を遡って受けたい場合、申告期限は令和8年12月31日です。書類の準備(登記事項証明書の取り直し、過去の源泉徴収票の再発行など)に時間がかかることを考えると、遅くとも11月中には動き出しておくことをおすすめします。
注意点3:過去の源泉徴収票は再発行できます
遡及申告で意外と困るのが、過去年分の源泉徴収票の入手です。手元にない場合でも、勤務先に再発行を依頼すれば対応してもらえます。会社の源泉徴収簿の保存期間は7年間と定められているため、5年遡及の範囲であれば再発行は可能です。
- 在職中・退職済みいずれも:勤務先(または前職)の経理担当に再発行を依頼
- 勤務先が倒産していて連絡できない場合:所轄税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を提出することで対応してもらえます
⑥ まとめ
- 住宅ローン控除を取り戻せるかは、「その年の確定申告書を提出したか」で決まる
- 確定申告書を出していない方は、5年以内なら還付申告で取り戻せる
- 確定申告書を出していて住宅ローン控除を書かなかった方は、原則は更正の請求できないが、税務署への相談(嘆願)で救済されるケースがある
- 遡って申告する際は、ワンストップ特例の失効に注意。ふるさと納税分も一緒に申告を
- 5年の時効が迫っている方は、年内のうちに早めの行動を
「自分はどのパターンに当てはまるか分からない」「税務署にどう相談していいか不安」「複数年分まとめて遡って申告したい」——そんなときは、お気軽に税理士までご相談ください。書類の整理から税務署とのやり取りまで、一括してサポートいたします。
当事務所では、徳島・鳴門エリアを中心に、住宅ローン控除の遡及申告や、複数年分の確定申告のやり直し、税務署への嘆願書作成などのご相談を承っております。「自分のケースでも取り戻せるのか」を知りたい段階でのお問い合わせも歓迎です。

