【令和8年度改正】8割控除が「7・5・3割控除」へ|免税事業者からの課税仕入れの経過措置の見直し

令和8年度税制改正解説 インボイス制度 7・5・3割控除

税制解説

【令和8年度改正】8割控除が「7・5・3割控除」へ|免税事業者からの課税仕入れの経過措置の見直し

令和8年度税制改正により、インボイス制度の「免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置(いわゆる8割控除)」が見直されました。改正のポイントは大きく2つで、①控除可能割合を「7割→5割→3割」と段階的に縮減しつつ適用期限を2年延長②控除限度額を10億円から1億円に大幅引下げです。本則課税(一般課税)で消費税申告を行うすべての事業者に影響します。

① 免税事業者からの課税仕入れの経過措置(7・5・3割控除)

そもそも経過措置とは

インボイス制度では、原則として適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)以外からの課税仕入れについては仕入税額控除ができません。しかし、制度開始による急激な負担増を緩和するため、免税事業者などインボイス発行事業者以外の者からの課税仕入れについても、一定割合を控除できる経過措置が設けられています。

この経過措置は、当初は次のスケジュールで段階的に縮小される予定でした。

改正前のスケジュール
・令和5年10月1日〜令和8年9月30日(3年間):80%控除
・令和8年10月1日〜令和11年9月30日(3年間):50%控除
・令和11年10月1日以降:控除不可(0%)

改正後:適用期限を2年延長+段階的に引下げ

令和8年度税制改正では、この経過措置の適用期限を2年延長した上で、控除可能割合を「7割→5割→3割」と段階的に引き下げることになりました。「8割控除」が「7・5・3割控除」と呼ばれるのはこのためです。

控除可能割合の推移(改正前 vs 改正後)
改正前
80%(3年)
50%(3年)
0%(完全廃止)

▼ 令和8年度税制改正
改正後
80%(3年)
70%(2年)
50%(2年)
30%
0%

R5.10
R8.10
R10.10
R11.10改正前廃止
R12.10
R13.10改正後廃止

↑ 直近2年は50%→70%に引上げ(負担緩和)

適用期間 改正前 改正後
令和5年10月1日〜令和8年9月30日 80%控除 80%控除据え置き
令和8年10月1日〜令和10年9月30日 50%控除 70%控除引上げ
令和10年10月1日〜令和11年9月30日 50%控除 50%控除据え置き
令和11年10月1日〜令和12年9月30日 0%(廃止) 50%控除期限延長分
令和12年10月1日〜令和13年9月30日 0%(廃止) 30%控除期限延長分
令和13年10月1日以降 0%(廃止) 0%(廃止)完全廃止
改正のポイント
直近の令和8年10月以降については、当初予定の50%から70%に引き上げられたことで、本則課税の事業者にとっては仕入税額控除の負担増が緩和される内容となっています。一方で、最終的な完全廃止は令和13年10月1日からとなり、当初の令和11年10月から2年遅れる形ですが、最終ゴール自体は変わりません

適用にあたっての要件

7・5・3割控除の適用を受けるためには、改正前の8割控除と同様に、次の要件を満たす必要があります。

  • 免税事業者などインボイス発行事業者以外の者からの課税仕入れであること
  • 区分記載請求書等と同様の事項が記載された請求書等の保存があること
  • 帳簿に「経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨」を記載していること
⚠️ 簡易課税・2割特例・3割特例の適用者は対象外
7・5・3割控除はあくまで本則課税(一般課税)を採用している事業者向けの制度です。簡易課税制度や2割特例・3割特例を選択している場合は、そもそも個別の仕入税額控除を計算しないため、この経過措置の影響は受けません。

② 控除限度額の見直し(10億円→1億円)

改正のポイント

免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置(改正前の8割控除)には、改正前から「一のインボイス発行事業者以外の者からの課税仕入れの合計額(税込)が、その年又は事業年度で10億円を超える場合には、その超えた部分について経過措置の適用を受けられない」という控除限度額のルールが設けられていました。

令和8年度税制改正では、この控除限度額が10億円から1億円に大幅に引き下げられます。

改正前
10億円
同一の免税事業者等からの
課税仕入れ合計額(税込)

改正後
1億円
10分の1に大幅引下げ。
R8.10.1以後開始する課税期間から適用

適用時期

控除限度額の見直しは、令和8年10月1日以後に開始する課税期間から適用されます。事業年度の区切り方によって、最初に影響を受ける課税期間が異なる点に注意が必要です。

事業者区分 最初に限度額の対象となる課税期間
9月決算法人
(事業年度開始日が10/1)
令和8年10月1日開始事業年度から最も早い
12月決算法人 令和9年1月1日開始事業年度から
個人事業者 令和9年分(R9.1.1〜R9.12.31)から
3月決算法人 令和9年4月1日開始事業年度から
その他の法人 令和8年10月1日以後に最初に開始する事業年度から
注意
事業年度の途中に令和8年10月1日を含む課税期間(例:6月決算法人の令和8年7月〜令和9年6月)については、その課税期間ではなく、次の課税期間から限度額のルールが適用されます。決算月によっては9月決算法人がもっとも早く影響を受ける点に留意してください。

具体例

免税事業者A社から年間1億5,000万円(税込)の課税仕入れを行った場合
(令和9年分・控除率70%で計算)
1億円以下の部分経過措置の対象(70%控除)
1億円超の5,000万円部分経過措置の対象外(仕入税額控除 不可)

控除対象となる消費税額1億円 × 10/110 × 70% = 約636万円
控除できない消費税額5,000万円 × 10/110 = 約455万円が控除不可

実務上の留意点主要な仕入先・外注先のうち、免税事業者で年間1億円超の取引先がないかチェックが必要

③ 改正の影響を受けやすい業種・取引

①の控除率の段階的引下げ(80%→70%→50%→30%→0%)と②の控除限度額の引下げ(10億円→1億円)は、いずれも免税事業者との取引が多い事業者にとって負担増となる改正です。次のような業種・取引はその両方の影響を受けやすく、特に注意が必要です。一方で、「帳簿のみの保存」特例の対象業種はこれらの影響を受けにくいため、自社の事業がどちら側にあたるかを整理しておくことが重要です。

⚠️ 影響を受けやすい業種・取引
免税事業者と継続的に取引を行う次のような業種・取引では、控除率の段階的引下げ控除限度額の引下げの両方の影響を受けやすくなります。控除率の引下げは取引額の大小に関わらず該当し、控除限度額は同一の免税事業者と年間1億円超の取引がある場合に追加で影響します。

  • 建設業の一人親方への外注費:職人・大工等が免税事業者であるケース
  • 人材派遣・業務委託:フリーランスのIT技術者・デザイナー・ライター等の活用
  • 農産物・水産物の生産者からの直接仕入れ:免税事業者の生産者と継続的に取引する卸売・小売・飲食
  • 講演料・原稿料・専門家報酬:免税事業者の講師・ライター等への継続的な支払い
  • 不動産関連の役務:リフォーム外注、清掃・管理委託など(個人事業者の業者を継続利用するケース)
💡 「帳簿のみの保存」特例の対象となる業種は影響を受けにくい
次の業種が行う特例対象取引は、もともとインボイスがなくても帳簿のみの保存で100%の仕入税額控除が認められているため、7・5・3割控除(控除率の段階的引下げ)にも控除限度額の引下げにも、いずれの影響も受けません。

  • 古物商(中古車販売店・リサイクルショップ・骨董品店など):棚卸資産としての古物の買取り
  • 質屋:棚卸資産としての質物の取得
  • 宅地建物取引業者:棚卸資産としての建物の買取り(再販目的)
  • 再生資源卸売業者等:再生資源・再生部品の買取り(金属スクラップ・廃品回収など)
  • 特定金属くず買受業の届出事業者(令和8年9月新設):棚卸資産としての特定金属くずの買受け

ただし、これらの業種であっても、特例の対象外の取引(消耗品の購入、固定資産としての取得、外注費など)については7・5・3割控除のルールが適用されますので、取引ごとに整理する必要があります。


④ インボイス制度に関する経過措置の適用期限一覧

令和8年度改正後の各種経過措置の適用期限を、時系列のガントチャートで整理すると次のとおりです。

インボイス制度の経過措置 適用期限一覧(令和8年度改正後)
登録の柔軟化
R11.9月の属する課税期間まで

2割特例
R8.9.30までの課税期間

3割特例(個人)(新設)
R9〜R10年分

免税事業者等からの
課税仕入れ経過措置(8割→7・5・3割)
80%
70%
50%
30%
0%

少額特例(1万円未満)
R11.9.30まで

簡易課税届出期限の特例
2割・3割特例終了後の切替に適用

R5.10
R6.10
R7.10
R8.10改正適用
R9.10
R10.10
R11.10
R12.10
R13.10ほぼ廃止
R14.10

登録の柔軟化
2割特例
3割特例
80%
70%
50%
30%
廃止(0%)
少額特例
簡易課税届出

▼ 表形式でも見る(クリックで展開)
経過措置 内容 適用期限
登録の柔軟化 免税事業者がインボイス発行事業者の登録を受ける際、課税期間の途中からの登録を認める 令和11年9月30日の属する課税期間まで
2割特例 インボイス登録により課税事業者となった事業者の納付税額を売上税額の2割とする 令和8年9月30日までの日の属する課税期間まで
3割特例(新設) 一定の要件を満たす個人事業者の納付税額を売上税額の3割とする 令和9年分・令和10年分の確定申告
免税事業者等からの
課税仕入れに係る経過措置
(7・5・3割控除)
免税事業者等からの課税仕入れにつき一定割合の仕入税額控除を認める
・R5.10〜R8.9:80%
・R8.10〜R10.9:70%
・R10.10〜R12.9:50%
・R12.10〜R13.9:30%
令和13年9月30日まで
少額特例 1万円未満の課税仕入れにつき、インボイスの保存を不要とする(一定の規模以下の事業者) 令和11年9月30日まで
簡易課税選択届出書の
提出期限の特例
2割特例・3割特例の翌課税期間から簡易課税に切り替える場合、申告期限まで提出可能 2割特例終了後の切替から順次適用
制度の方向性
今回の改正により、令和13年10月1日がインボイス制度の経過措置がほぼ全廃される節目となります。当初予定の令和11年10月から2年遅れる形ですが、最終的に「免税事業者等からの課税仕入れは仕入税額控除できない」という原則ルールに移行することは変わりません。

まとめ:本則課税の事業者は仕入先の管理がより重要に

今回の7・5・3割控除に関する改正のポイントは次のとおりです。

  • 適用期限が2年延長され、控除割合は「70%→50%→30%→0%」と段階的に引き下げられる
  • 令和8年10月以降は、当初予定の50%から70%に引き上げられ、本則課税事業者の負担増が緩和
  • 一方で控除限度額が10億円から1億円に引下げられ、大口の免税事業者取引には注意
  • 最終的な完全廃止は令和13年10月1日からとなる

今すぐやっておきたいこと

  • 主要な仕入先・外注先のインボイス登録状況の再確認:登録番号が未確認の取引先がないか棚卸しを行う
  • 免税事業者との取引額の把握:1社あたり年間1億円(税込)を超える取引先がないかチェック
  • 会計システムの設定確認:令和8年10月以降の控除割合(70%)への切替が会計ソフト側で正しく行われるかの確認
  • 事業年度開始月の確認:特に9月決算法人は、令和8年10月開始事業年度から控除限度額(1億円)の影響を受けるため早期対応が必要

令和8年度改正による7・5・3割控除の見直しは、ひとことで言えば「直近の負担増は緩和、ただし完全廃止のゴールは変わらず2年延期」という内容です。本則課税で消費税申告を行っている事業者にとっては、目先の控除割合の引上げ(50%→70%)はメリットですが、控除限度額が10億円から1億円に大幅に引き下げられた点は実務上の影響が大きい改正です。

特に、建設業の一人親方への外注費人材派遣・業務委託農産物・水産物の生産者からの直接仕入れなどで免税事業者との継続的な取引がある事業者は、控除率の段階的引下げ(70%→50%→30%→0%)控除限度額の引下げの両方の影響を受けることになります。控除率の引下げは取引額の大小に関わらず該当し、年間1億円を超える取引先がある場合は令和8年10月以後に開始する課税期間から限度額の縛りも追加で受けます。一方で、古物商・宅建業者・再生資源卸売業者等が特例(古物商特例・宅建業特例・再生資源特例)の対象として行う取引については、もともとインボイス保存不要で100%控除できるため、これらのルールの影響は受けません。控除率・控除限度額の両面から、自社の取引先と取引額を早めに棚卸ししておくことをお勧めします。

当事務所でも、インボイス制度への対応や、免税事業者との取引における仕入税額控除の管理、令和8年度改正への対応についてのご相談をお受けしています。ご不明な点やご質問は、いつでもお気軽にお問い合わせください。


まとめ記事令和8年度税制改正のポイントまとめ
令和8年度税制改正の主要項目を、個人・給与・中小企業・消費税の4分類で整理しています。