「今年は利益が思ったより出そうだ」という方から、経営セーフティ共済(正式名称は中小企業倒産防止共済制度)の掛金を今年の経費にできるかというご相談をよく受けます。この掛金が経費になるのは、個人事業主は12月31日まで、法人は決算日までに実際に払い込んだ分だけです。そして、申告書に明細書を添付しなければ、支払っていても経費にできません。これは個人事業主も法人も同じです。
この記事では、いつまでにいくら支払い、申告書に何を添付すればよいかをまとめました。個人事業主の方は「個人事業主の方へ」、法人の方は「法人の方へ」をお読みください。
先に結論|個人も法人も支払った分のみ・明細書添付が必須
経営セーフティ共済は、取引先の倒産に備えて掛金を積み立てておく国の共済制度で、掛金の全額を経費にできるのが特徴です。この掛金は、支払った日の属する年(法人は事業年度)の経費になります。加入を申し込んだだけ、契約が成立しただけでは経費になりません。実際にお金が口座から引き落とされた日、または振り込んだ日が基準です。
もう1点、確定申告書に「明細書」を添付して初めて経費になります。帳簿に経費として記載していても、明細書を添付しなければ原則として認められません。
なお、経費にした掛金は、解約手当金を受け取るときに収入になります。税金がなくなるのではなく、納める時期が後ろにずれる制度です。
未加入の方は、事業を開始してから1年以上経過しているかを確認してください。1年未満の方は、残念ながら今年(法人は今期)は加入できません。
なお、名称の似た制度に「小規模企業共済」があります。こちらは経営者の退職金を積み立てる制度で、掛金は所得から差し引く「控除」として扱います。経費になる経営セーフティ共済とは別の制度であり、申告欄も異なります。この記事では経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)のみを扱います。
個人事業主の方へ
12月31日までの支払分が「今年の経費」になる
個人事業主の場合、掛金は支払った日の属する年の事業所得の必要経費になります。事業所得とは、事業で得た利益のことです。1月1日から12月31日までに実際に払い込んだ掛金の合計を、帳簿と青色申告決算書(白色申告なら収支内訳書)に経費として計上します。
また、経費にできるのは事業所得の計算においてのみです。不動産所得のみの方など、事業所得がない方は対象になりませんのでご注意ください。
確定申告書に「特定の基金に対する負担金等の必要経費算入に関する明細書」の添付が必要
確定申告書には、「特定の基金に対する負担金等の必要経費算入に関する明細書」を添付します。様式は国税庁のホームページから取得できます。e-Taxで申告する場合も、書面で申告する場合も添付できます。添付していない場合、原則として経費にできません。税務署長がやむを得ない事情があると認めた場合の例外規定はありますが、当てにせず最初から確実に添付しておきましょう。
以下、この書類を「明細書」と呼びます。明細書は会計ソフトが自動で作る書類ではないので、ご自身で申告する方は様式を取り寄せ、税理士に頼んでいる方は次の一言を伝えれば足ります。
確定申告を税理士などに依頼している方は、「経営セーフティ共済の掛金を支払っている」と事前に伝えてください。伝わっていないと、明細書が添付されないまま申告されるおそれがあります。
今年の経費にする3つの方法(個人事業主)
今年の経費を増やしたいときの方法は、次の3つです。いずれも12月31日までに払い込みが完了していることが条件です。
- 新しく加入する
継続して1年以上事業を行っていることが条件です。開業から1年経過していない方は、今年は加入できません。年内の経費にするには、年内の最終営業日までに中小機構へ掛金が着金している必要があります。中小機構の案内によると、口座振替を選んだ場合、初回の引き落としは申込月の翌々月27日(土日祝日は翌営業日)です。申込月のうちに払い込みたい場合は、中小機構の「加入時前納振込専用口座」へ振り込む方法があります。最新の取り扱いは中小機構の案内で確認してください。 - 毎月の掛金を増額する
掛金月額は5,000円から20万円の範囲で、5,000円単位で増額できます。増額の手続きには締切日があります。中小機構の案内では、増額したい月の5日までに中小機構へ書類が届くことが条件で、その月の27日から増額後の金額で引き落とされます。5日は中小機構への到着期限なので、商工会議所や金融機関などの窓口へは前月末を目途に提出してください。12月分から増やしたい場合は、最新の期限を中小機構の案内で確かめたうえで早めに手続きしてください。 - 1年分をまとめて前納する
前納した掛金は、前納期間が1年以内のものに限り、支払った年の経費にできます。前納の申出にも締切日があります。中小機構の案内では、前納したい月の5日までに中小機構へ書類が届くことが条件で、その月の27日に前納分が引き落とされます。増額と同じく、窓口へは前月末を目途に提出してください。
年内に確実に払い終えておきたい方は、前納で12月31日より前に払い終えておくのが確実です。詳しくは「振替日は毎月27日」の項をご覧ください。
法人の方へ
決算日までの支払分が「その事業年度の経費(損金)」になる
法人の場合、掛金は支払った日の属する事業年度の損金になります。損金とは、法人税を計算するときに利益から差し引ける経費のことです。締切は「年内」ではなく、自社の決算日です。3月決算なら3月31日、9月決算なら9月30日までに実際に払い込んだ分が、その期の損金になります。
国税庁の通達でも、損金に算入する時期は「現実に支払った日」を含む事業年度とされています。決算日までに契約していても、引き落としが翌期になれば翌期の損金となります。
法人税申告書に「特定の基金に対する負担金等の損金算入に関する明細書」の添付が必要
法人税の申告書には、「特定の基金に対する負担金等の損金算入に関する明細書」を添付します。法人税申告書の別表の1つで、国税庁の様式ページから取得できます。添付していない場合、原則として損金に算入できません。例外の扱いは個人と同様です。
以下、この書類を「明細書」と呼びます。会計ソフトが自動で作る書類ではないので、自社で申告する法人は様式を取り寄せ、税理士に頼んでいる法人は次の一言を伝えれば足ります。
決算・申告を税理士に依頼している法人は、「経営セーフティ共済の掛金を支払っている(今期から支払う)」と必ず伝えてください。特に、後述する「資産として帳簿に残す方法」を選択した場合は、申告書側で損金算入する申告調整が必要になるため、伝え忘れがそのまま損金の計上漏れにつながります。
今期の経費(損金)にする3つの方法(法人)
今期の損金を増やしたいときの方法は、次の3つです。いずれも決算日までに払い込みが完了していることが条件です。
- 新しく加入する
継続して1年以上事業を行っていることが条件です。設立から1年経過していない法人は、今期は加入できません。今期の損金にするには、事業年度内の最終営業日までに中小機構へ掛金が着金している必要があります。初回の引き落とし時期と、申込月のうちに振り込む方法は個人事業主と同じです(口座振替なら申込月の翌々月27日)。最新の取り扱いは中小機構の案内で確認してください。 - 毎月の掛金を増額する
掛金月額は5,000円から20万円の範囲で、5,000円単位で増額できます。増額の手続きの締切日は個人事業主と同じです。中小機構の案内では、増額したい月の5日までに中小機構へ書類が届くこと、窓口へは前月末を目途に提出することが条件です。最新の期限は中小機構の案内でご確認ください。 - 1年分をまとめて前納する
前納した掛金は、前納期間が1年以内のものに限り、支払った事業年度の損金にできます。1年を超える前納は、その期の損金にできる掛金には該当しません。前納の申出の締切日も個人事業主と同じです。中小機構の案内では、前納したい月の5日までに中小機構へ書類が届くことが条件です。
決算月の振替が翌月にずれるおそれについては「振替日は毎月27日」の項をご覧ください。確実にしたい場合は、前納によって決算日より前に払い終えておくことをおすすめします。
法人限定|資産計上したまま申告書で経費(損金算入)にする方法
法人だけが利用できる方法として、掛金を費用処理せず「保険積立金」などの資産として帳簿に残したまま、法人税の申告書上でのみ損金として差し引く方法があります。実務では「積立金方式」と呼ばれます。掛金の損金算入を定めた条文は、帳簿上でどう処理するかを要件としていないため、この方法が認められています。
帳簿に資産として計上すると、決算書上の利益は掛金が差し引かれないため大きいままとなり、税金だけを抑えられます。関係各所に決算書を提示する機会が多い法人にとっては、利益を必要以上に小さく見せずに済むメリットがあります。一方、費用として処理すれば、決算書の利益と税金の計算上の所得の差が小さく、分かりやすくなります。どちらがいいのかは会社の状況によりますので、顧問税理士と相談して決定してください。相談するときは「積立金方式にできるか」と聞けば足ります。
この方法を選択した場合は、申告書を作成する担当者(税理士など)に「資産計上している」と必ず伝えてください。伝わっていないと、申告書で差し引く処理が漏れ、帳簿上でも申告書上でも経費になっていないという事態を招きます。
個人と法人の共通点・相違点
| 個人事業主 | 法人 | |
|---|---|---|
| 締切 | 12月31日 | 決算日 |
| 経費になる金額 | 締切までに支払った分 | 締切までに支払った分 |
| 掛金月額 | 5,000円〜20万円(年間で最大240万円) | 同左 |
| 添付書類 | 必要経費算入の明細書 | 損金算入の明細書 |
| 提出先 | 所轄の税務署(確定申告書に添付) | 所轄の税務署(法人税申告書に添付) |
| 帳簿の扱い | 経費として計上する | 経費計上/資産計上して申告書で差し引く、のどちらも可 |
| 解約後2年の掛金 | 経費にならない | 損金にならない |
| 解約手当金 | 受け取った年の収入 | 受け取った事業年度の益金 |
共通点は「支払った分のみ」「明細書の添付が必須」「解約後2年は経費にならない」「解約手当金は収入になる」の4点です。相違点は、締切・添付書類の名称・帳簿上の取り扱いの3点です。
よくある失敗・注意点
解約後2年間は支払っても経費にならない(再加入のペナルティ)
「いったん解約して解約手当金を受け取り、すぐに入り直せばまた経費にできる」と思いがちですが、2024年(令和6年)10月1日以後に共済契約を解除して入り直した場合、解除の日から2年を経過する日までの間にその契約について支払う掛金は、必要経費にも損金にもなりません。中小機構もこの変更について注意喚起を行っています。解約を検討する際は、この2年間の空白期間を織り込んで判断してください。
振替日は毎月27日|決算月によっては翌月に回ることがあります
中小機構の案内によると、掛金の口座振替日は毎月27日で、土日祝日に当たると翌営業日に繰り越されます。12月分は、27日が休日でも翌営業日は年内に収まるため、1月にずれ込むことは考えづらいです。
注意が必要なのは法人、特に2月決算の法人です。2月は28日(うるう年は29日)までしかないため、27日が休日に当たると翌営業日が3月にずれ込む年があり、その場合は今期の損金に入らないおそれがあります。決算月の振替が今期の損金になるかどうかは、顧問税理士がいる法人は税理士に、いない場合は所轄の税務署にご確認ください。確実にしたい場合は、前納によって決算日より前に払い終えておくことをおすすめします。
経費にした掛金は、解約手当金の受取時に収入(益金)となる
掛金を経費にした分、解約して解約手当金を受け取った際には、個人事業主は受け取った年の事業所得の収入、法人は受け取った事業年度の益金になります。経費にすることで税金が免除されるわけではなく、税金の支払時期が将来に繰り延べられる仕組みであると理解しておくと、判断を誤りません。
まずは、いま払っている掛金月額と、12月(法人は決算月)の振替日の確認から始めてください。未加入の方は、事業を始めてから1年以上たっているかの確認から始めてください。
参考資料
- 租税特別措置法第28条(特定の基金に対する負担金等の必要経費算入の特例。第1項第2号・第2項・第3項)
- 租税特別措置法第66条の11(特定の基金に対する負担金等の損金算入の特例。第1項第2号・第2項・第3項)
- 租税特別措置法関係通達(法人税編)66の11-2(負担金の損金算入時期)・66の11-3(中小企業倒産防止共済事業の前払掛金)
- 所得税法第27条(事業所得)・第75条第2項(小規模企業共済等掛金の範囲)
- 法人税法第22条第2項(益金の額)
- 国税庁「特定の基金に対する負担金等の必要経費算入に関する明細書」
- 国税庁「法人税申告書別表等」(特定の基金に対する負担金等の損金算入に関する明細書)
- 中小機構「経営セーフティ共済」
- 中小機構「税制の特例に関する内容の変更について」
- 中小機構「経営セーフティ共済の加入資格」
- 中小機構「加入後はじめての掛金納付方法」
- 中小機構「経営セーフティ共済の掛金」
- 中小機構「掛金の増額」
- 中小機構「掛金の前納」
本記事は2026年(令和8年)9月時点の情報です。個別の判断は税理士にご相談ください。

