2割特例終了|個人事業者の3割特例と簡易課税を徹底比較

徹底比較 3割特例と簡易課税 どっちを選ぶ?

個人事業者の消費税の2割特例は、2026年(令和8年)分の申告で終わります。2027年(令和9年)分と2028年(令和10年)分は、売上の消費税の3割を納める「3割特例」か、業種ごとの割合で計算する「簡易課税」か、迷われる方が多いと思います。

インボイス登録を続ける人に向けて、この2つを8つの項目と業種別の納める額で比べ、届出の期限までまとめます。

卸売・小売なら簡易課税、飲食店・サービス業・不動産業なら3割特例

簡易課税では、売上の消費税から、業種ごとに決められた割合(みなし仕入率)の分を差し引いて、納める消費税を計算します。この割合が70%より高い業種は簡易課税のほうが、70%より低い業種は3割特例のほうが、納める消費税が少なく、有利になります。( )は差し引ける割合です。

  • 簡易課税のほうが有利: 卸売(90%)、小売(80%)
  • 3割特例のほうが有利: 飲食店(60%)、IT・デザインなどのサービス業(50%)、不動産業(40%)
  • どちらも同じ: 材料を自分で仕入れる製造業・建設業(70%)

2026年分を2割特例で申告していれば、2027年分から簡易課税にする「消費税簡易課税制度選択届出書」(以下、簡易課税の届出書)は、2028年3月31日までに出せば間に合います。簡易課税の届出書は、年内に急いで出す必要はありません。

まずは、自分の事業が簡易課税のどの業種区分に当たるかを確かめてください。卸売・小売なら、2028年3月31日までに簡易課税の届出書を所轄の税務署に出し、それ以外の業種なら届出書を出さずに3割特例を使うのが基本です。

2027年分・2028年分は、届出なしで3割特例が使える

2割特例は、2026年分の申告が最後です。その代わり、令和8年度の改正で、個人事業者向けの3割特例ができました。2027年分と2028年分の申告で、納める消費税を売上の消費税の3割にできます。

3割特例には、事前の届出も、続けて使わなければならない決まりもありません。確定申告書に3割特例を使う旨を書くだけで、その年ごとに使うかどうかを選べます。

なお、インボイス登録をやめて免税事業者に戻るかどうかは、当事務所の記事「2割特例は今年で終了。個人事業者がインボイス登録をやめて免税に戻るなら届出は12月17日まで」で取り上げています。この記事は、登録を続ける人向けです。

3割特例・簡易課税・本則課税を8つの項目で比べる

「本則課税」は、仕入や経費で実際に払った消費税を差し引いて計算する、原則的な方法のことです。3割特例と簡易課税に、本則課税も並べて比べます。

項目3割特例簡易課税本則課税
納める消費税売上の消費税の3割業種により売上の消費税の10〜60%売上の消費税から、実際に払った仕入や経費の消費税を引いた額
使える人2年前の課税売上高が1,000万円以下のインボイス登録事業者簡易課税の届出書を出している、2年前の課税売上高が5,000万円以下の課税事業者簡易課税の届出書を出していない課税事業者、または届出書を出していても2年前の課税売上高が5,000万円を超える課税事業者
使える年2027年分と2028年分続けて使える続けて使える
事前の届出不要(申告書に書くだけ)必要(2割・3割特例を使った翌年は申告期限まで)不要(簡易課税から戻るときは、前の年のうちにやめる届出書が必要)
仕入の消費税の計算・
インボイスの保存
不要不要(業種の割合で計算)必要
選んだ後の縛り申告のたびに選べる原則2年は本則課税に戻れないなし(高額な設備を仕入れた年は、その後しばらく簡易課税に移れない)
2029年分以後使えない使える使える
還付なしなし受けられることがある

3割特例を使える人は、2割特例と同じく、インボイス登録をきっかけに免税事業者から課税事業者になった個人事業者です。主な条件は、2年前の課税売上高が1,000万円以下であること(2027年分なら2025年、2028年分なら2026年で判定)と、インボイス登録をしていることです。課税期間を短くする届出をしている場合など、使えない場合もあるので、国税庁の「3割特例」の案内にあるフローチャートで確かめてください。

3割特例は、2割特例と同じく、簡易課税の届出書を出していても、申告のときに選べます。

売上の消費税が100万円なら、簡易課税は10万円〜60万円、3割特例は30万円

売上の消費税が100万円の場合に、納める消費税を業種別に比べると次のとおりです。少ないほうを太字にしています。

主な業種みなし仕入率簡易課税3割特例
卸売90%10万円30万円
小売80%20万円30万円
製造業・建設業70%30万円30万円
飲食店など60%40万円30万円
サービス業50%50万円30万円
不動産業40%60万円30万円

サービス業には、IT・デザイン・執筆・コンサルなどが入ります。製造業・建設業の70%は、材料を自分で仕入れる場合です。材料を受け取って作業だけを請け負う場合は、60%の区分になります。

100万円は割合を金額にした目安です。自分の売上の消費税の額に置き換えて読んでください。

2027年分から簡易課税にする届出は、2028年3月31日でも間に合う

簡易課税を使うには、本来は使いたい年の前年12月31日までに届出書を出す必要があります。

令和8年度の改正で、2割特例や3割特例を使った年の翌年分から簡易課税にする場合は、その翌年分の確定申告期限までに届出書を出せば間に合うようになりました。2026年分を2割特例で申告した人が2027年分から簡易課税にするなら、期限は2027年分の確定申告期限である2028年3月31日です。届出書には、簡易課税を始める年(この例なら2027年分)を書き、出した控えを残しておきましょう。

この期限に間に合わなかったときは、2027年分は3割特例で申告し、2028年分から簡易課税にできます。簡易課税を始める年ごとの届出書の期限は、次のとおりです。どれも、前の年に2割特例か3割特例を使った場合です。

  • 2027年分から: 2028年3月31日
  • 2028年分から: 2029年4月2日(3月31日が土曜日のため)
  • 2029年分から: 2030年4月1日(3月31日が日曜日のため)

2年前の課税売上高が1,000万円を超えて3割特例を使えない年も、5,000万円以下であれば、前の年に2割特例か3割特例を使っていれば、その年の確定申告期限までに簡易課税の届出書を出せば簡易課税で申告できます。高額な設備を仕入れた年などは簡易課税を選べないことがあるので、顧問税理士に確かめてください。出さなければ本則課税になるので、その年の仕入や経費のインボイスを保存しておいてください。

2029年分以後と、設備投資をする年は別に考える

3割特例は、2028年分で終わります。2029年分は、簡易課税の届出書を出せば簡易課税、出さなければ本則課税で申告します。2028年分で3割特例を使っていれば、届出書は2030年4月1日までに出せば間に合います。

簡易課税は、選んだら原則として2年は本則課税に戻れません。2029年分から始めると、2030年分までは簡易課税で申告します。仕入や経費で払う消費税が、売上の消費税に業種の割合をかけた額より多くなりそうなら、本則課税のほうが納める額は少なくなります。

また、大きな設備投資をする年は、本則課税なら仕入の消費税が売上の消費税を上回り、還付を受けられることがあります。3割特例と簡易課税では、通常、還付はありません。設備投資で、その年に払う消費税が売上の消費税を上回りそうなときは、選ぶ前に顧問税理士に相談してください。

参考資料

本記事は2026年(令和8年)9月時点の情報です。個別の判断は税理士にご相談ください。